芝生の上を3時間走り続ける。
フルマラソンチャレンジまで50日を切りました。
そんなある日、私のコーチでもある西本武司さんから召集がかかる。
西本さん:「そろそろ3時間走、やっといたほうがいいすねー」
私:「いきなりそんなに走れますか」
西本さん:「芝生の上をゆーっくり走りますから大丈夫ですよ」
ということで久しぶりによく晴れた日曜日、世田谷の砧公園に午前10時に集合。
西本さんは、自らもサブ3間近の筋金入りのランナーであり、箱根駅伝に精通していたり、NumberDoとか様々な媒体に寄稿したり、ランニングイベントを主催したりと、「市民ランナー」のキーマンとして活動している。
その一方で渋谷のラジオの制作部長をしていたり、本のプロデュースをしていたり、番組の企画を考えたり、何をしているかわからないけど、やたらいろんなことに精通している人である。
一緒にフルマラソンにチャレンジする日テレのT部長こと、土屋敏男さんもこの3時間に参加。土屋さんは、すでにフルマラソン完走の快挙を成し遂げている。
西本さん、走り始める前に入念な準備がある。
まずは靴の紐結び。ゆるんでいないかどうかは無論だが、靴のなかで正しい位置で足が固定されるために、「正しい結び方」を指南する。
靴紐がゆるんでいる状態で、かかとで地面をトントンさせた上で、紐を結ぶ。
結び方にもコツがあるのですが、憶えられなかったので、こちらを参照してください。
そんな間にも数々の芸人を震え上がらせてきたT部長、ぼそっとつぶやく一言で私の弱い心を折ろうとする。
T部長:「河瀬さん、フルマラソン走るとね、想像を超えたことが
いっぱいおきるんですよ」
私:「(ドキドキしながら)想像を超えたことってどういうことですか」
T部長:「例えばね、足の裏が痛くなるんですよ」
私:「えっ!足の裏ですか!」
T部長:「尋常じゃない回数、足を着地させつづけるわけですから、
尋常じゃない負荷がかかるんですよ。シャツに擦れて乳首が痛くなったりね」
私:「えっ!乳首もですか!」
そんなことを話していると、西本さんがおもむろに何かを差し出す。
西本さん:「走る前に、これ飲んでください。楽に走れますから。」
私:「なんですか、これ?ラクに走れるってひょっとして何かヤバい...」
西本さん:「アミノバイタルを水で溶いたものです。
走る前にアミノ酸を体に入れておくといいんですよ」
その後も1時間おきに補給するためのアミノ酸ゼリーパックを、土屋さんと私の分を用意していたり、氷入りの水ボトルを持ってきていたり、西本さん、その準備は完璧である。
で、もちろん体にガタのきたシニアランナーである私は、準備運動も入念に行い、10時20分ごろに砧公園のなかを走り始める。
砧公園には、ランニングコースがあるのだが、西本さんはそこは走らないという。
私:「あれ、コースを走らないんですか」
西本さん:「芝生の上を走りますからね、その方がいいんです」
私:「そうなんですか?」
西本さん:「クッションがいいので膝とかを痛めにくいんですよね。
その反面、アスファルトと違い靴のクッションの反発が少ないので、
より多くの負荷が筋肉にかかるんですよ」
私:「なるほど、安全に高負荷トレーニングができるってことですか」
なんてことを話しながら、もくもくと走る。
ペースは1キロ8〜9分。本当にゆっくりだけれどそれでもしっかり負荷がかかる。
西本さん:「フルマラソンの練習は、距離じゃなくて時間なんですよ」
私:「どういうことですか?」
西本さん:「最初から距離ははしれないじゃないですか。
長時間体を前に進み続けることに慣れることがまずは大切なんです。
歩くのでも3時間歩き”続ける”のはやはり相当な負荷なんです。
そうして初めてサビついた身体が動きだすんですよ。」
私:「はあ、そんなもんなんですか」
西本さん:「それに3時間走をすると、フォームも自然によくなります」
私:「ただゆっくり走るだけですか?」
西本さん:「そうです。長時間走り続けると、なるべくラクに走れるように、
自然に身体からチカラがぬけるので、無駄のないフォームになるんです」
私:「はあ、そんなもんなんですかねえ」
でも確かにそれはそうでした。
下の写真は、走り始めて1時間くらいの時のもの。
私のほうをみると、肩がかなり上がって力んで走っているのがわかります。
で、こちらは2時間くらい走り続けた後の写真。
肩が下がってリラックスして走っているように確かに見えます。
しかも不思議なことに後日、筋肉痛もなかったんですよね。
3時間走り続けたのは、たぶん47年の人生のなかで初めてなので、それなりの疲労はありましたが、全く筋肉痛がないということは、それなりのフォームで走れていたのかもしれません。
さすが市民ランナーのキーマン・西本さん、おそるべしです。
そんなこんなで走り続けて、あと数分で3時間走達成というところまできた時、西本パイセンのペースがじわじわ上がり始める。
西本さん:「河瀬さん、ここから負荷をマックスまであげますよ」
私:「え!」
西本さん:「最後は全力走のペースまであげます」
私:「えええええええ!」
といっているうちにみるみるペースがあがる。
そもそも1キロ8分ペースだったのに、あっというまに1キロ5分ペースに。
西本さん:「あと2分です。ここからさらにあげていきます」
私:「はい!(まだあがるのか)」
西本さん:「1キロ4分30秒まであがります」
私:「はい!(マジすか!)」
この頃から西本さんの顔から笑顔が消え、炎の鬼コーチモードが発動される。
西本さん:「腕の振りを大きく!」
私:「はい!」
西本さん:「坂道は、体を前傾!」
私:「はい!」
西本さん:「ペースアップ!」
私:「はい!」
と、そんなこんなで無我夢中でゴール。
クタクタに疲れて芝生の上に倒れ込んでいたら、西本さんが自販機でコーラを買ってくれた。
西本さん:「走った後は、これがうまいんですよ」
確かに激ウマでした。
数々のランナーをフルマラソン完走に導いただけあって、その指導はきめ細かく完璧。
西本さんの教えを守っていれば、ひょっとすればヘタレの私も...と夢見る47歳。
あと1ヶ月あまり、やれるだけやってみようとおもったのでアリンス。